
暖かくなってきた季節、シンプルな白シャツに黒のベースボールキャップを合わせて出かけたのだが、途中でふとショップの鏡に映った自分を見て「何だか味気ないな」と感じてしまった。全体がまとまりすぎていて面白みがなく、せっかくの休日なのにコーディネートに高揚感がないのだ。「大人の帽子選びは、無難な黒やネイビーに逃げるのではなく、パッと目を惹く色使いと上質な素材感で『抜け感』を作ることが大切なのだ」と痛感した。そんなタイミングでクロムハーツ(Chrome Hearts)から登場した新作トラッカーキャップ「KING TACO」の情報は、私のスタイリングの悩みに見事な刺激を与えてくれた。
今回リリースされた「KING TACO」は、クラシックなトラッカーハットのフォルムをベースに、鮮烈なレッドとクリーンなホワイトを組み合わせたツートンカラーが印象的な一品だ。フロント部分には厚みのあるホワイトのパッド生地が使われ、ブランドのアイコンであるトリプルクロスのグラフィックと“CHROME HEARTS / HOLLYWOOD”のロゴがバランスよく配置されている。さらに、フロントのツバには眩しいほどの明るいレッド、後部のメッシュには落ち着いたトーンのレッドを採用するという、細部まで計算された配色が光る。

ストリートファッションにおけるトラッカーキャップ(メッシュキャップ)といえば、一歩間違えると「作業着っぽさ」や「子供っぽさ」が出てしまう難易度の高いアイテムでもある。しかし、クロムハーツが手掛けると一気にラグジュアリーな雰囲気を纏うから面白い。その最大の立役者が、トップに鎮座する「クロスボールディテールの925スターリングシルバーパーツ」と、リアに飾られたメタルバッジだ。光を反射して鈍く輝くシルバーの存在感が、キャップ全体に圧倒的な高級感と大人にふさわしい重厚感をもたらしている。
日常使いのキャップとして比較対象に挙がるのは、例えばシュプリーム(SUPREME)のボックスロゴ・キャンプキャップや、ニューエラ(NEW ERA)の59FIFTYコラボモデルなどだろう。シュプリームのキャップはストリートの王道であり、カジュアルな合わせやすさは抜群だが、大人の休日に必要な「ラグジュアリーな艶っぽさ」という点では少し若すぎる印象を与えることがある。ニューエラはスポーツライクで形も綺麗だが、被る人が多すぎて街中で被りがちだ。
それに比べてクロムハーツのトラッカーキャップは、アメカジのヴィンテージ感と上質なシルバーアクセの要素が融合した、唯一無二のポジションを確立している。ネット上では精巧に見えるクロム ハーツ 帽子のような模倣品も存在するが、フロントの白パッドの滑らかな質感や、使い込むほどに味わいを増す925シルバーの鈍い光沢感は、本物だけが持つ特別な魅力だ。フロントの白地と赤のツバが顔まわりをパッと明るく見せてくれるため、シンプルなコーディネートに投入するだけで一気に華やかさが増す。古着のチェックシャツを羽織ったラフなスタイルにも、洗練されたセットアップのハズしとしても機能する万能さを持っているのだ。
スタイリングの具体例を挙げるなら、あえてネイビーのカバーオールやデニムジャケットといったワーク調のトップスに、この「KING TACO」を合わせるスタイルをおすすめしたい。ネイビーとキャップのレッド・ホワイトが綺麗なトリコロールカラーのような対比を生み出し、無骨なワークスタイルの中にパリッとした清潔感とモードな遊び心が生まれる。頭頂部のシルバーパーツがチラリと見えることで、カジュアルになりすぎない大人の品格を保つことができるのだ。

だが、このキャップを褒めちぎる一方で、リアルな買い心地としての難点も直視しなければならない。まず最大の壁は「61,000円という価格設定」と「絶望的な入手難易度」だ。公式ウェブサイトで発売されたものの即ソールドアウトとなり、現在はラインナップから消えている状態であるため、欲しくてもすぐに買えないのが現実だ。また、メッシュキャップという構造上、真冬の防寒には向かないため、活躍するシーズンが春から秋口にかけてに集中するという実用上の制限もある。
さらに、フロントのホワイトパッドは汚れに非常に敏感だ。ファンデーションや汗がつくと落ちにくく、洗う際にもトップのシルバー925パーツを傷つけないよう細心の注意を払う必要がある。そうした手入れの手間を含めても「この美しいデザインとシルバーの輝きを手に入れたいか」という愛着が試されるアイテムと言える。
結論として、クロムハーツの「KING TACO」トラッカーキャップは、「黒や無地の帽子ばかりでマンネリしている」「コーディネートに一発で主役になれる色とラグジュアリー感を足したい」という人にとって、間違いなく所有欲を満たしてくれる最高のピースだ。もし運良く再販や正規店での入荷に出会えたなら、迷わず手に入れて、太陽の下でツートンカラーとシルバーの輝きを心ゆくまで楽しんでほしい。